税理士はなくならない!?AI時代の『税理士の将来性』について考える

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税理士の仕事はAIに代替されるって言われているけど…。
もう税理士はオワコンでしょうか?税理士の将来性ってどうなの?

こんにちは!むたです。

大学院卒業後から都内の税理士法人(現在2社目)に勤めており、転職を成功させて今ではフルリモートの税理士法人で自由に働いています

大学1年時より簿記3級に挑戦し、大学3年時から4度の税理士試験で3科目(簿記論・財務諸表論・法人税法)に合格、院免で税理士になりました。

近年、AIやIT技術の普及により「税理士の仕事はなくなる」「税理士はオワコン」といった声をよく耳にするようなりました。

事実、クラウド会計の発達より、データ入力や記帳といった業務が自動化されてきています。

そんなAI時代を生きる「税理士の将来性」を不安に感じている方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、実際に勤務税理士として働く立場から、AI時代の『税理士の将来性』について現場目線で考えてみたいと思います。

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目次

「税理士はなくなる」と言われる理由

そもそも、なぜ「税理士の仕事はなくなる・オワコン」と言われるようになったのでしょうか?

その理由を探ってみましょう。

99%の確率でAIに代替されるという衝撃の論文発表

10年後、今ある職種の半分が消えてなくなる

2014年に発表された、イギリスのオックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授らによる『雇用の未来』という論文があります。

引用元:THE FUTURE OF EMPLOYMENT(雇用の未来)

その論文では、AIの発達により人間の仕事の多くがなくなってしまう。
そんな未来を予想したのです。

論文では、この先AIにより置き換わるであろう仕事を702職種ピックアップしています。

その中で会計事務所・税理士の仕事として、次の仕事内容が上位にランクインしていました。

AIに置き換えられる確率

【99%】 Tax Preparers(税務申告書作成者)
【99%】 Data Entry Keyers(データ入力係)
【94%】 Accountants and Auditors(会計監査員)

さらに、野村総合研究所とマイケル・A・オズボーン准教授他の共同研究によれば、AIによる代替可能性は、弁護士1.4%、司法書士78.0%、公認会計士85.9%、税理士92.5%、中小企業診断士0.2%、経営コンサルタント0.3%などとされています。

これらの発表は世の中に衝撃を与え、AIに置き換わる仕事として、一気に税理士オワコン説が加速しました。

クラウド会計の普及に伴う税務申告の簡便化

近年クラウド会計の進化のスピードも目を見張るものがあります。

クラウド会計とは、クラウド上で利用できる会計ソフトのことを指し、インターネット環境さえあれば端末を選ばずに利用できることが特徴です。

代表的存在としては『freee』『マネーフォワード』が挙げられるでしょう。

クラウド会計を導入すると、銀行口座やクレジットカード、決済サービスと会計ソフトを連携し、一定のルールに従い自動的に仕訳を生成することができます。

紙のレシートや領収書をスマホカメラで撮って取り込めば、文字を読み取り自動で仕訳を作成してくれます。
電子帳簿保存法との相性も抜群です。

私の現職場もクラウド会計をメインに利用していますが、年々のアップデートで自動化が加速化しており、記帳や税務申告書の作成がとても効率化されています。

会計や税務の知識が浅い人でも使いやすい仕様となっているので、もっと開発が進めば、素人が記帳から税務申告書の作成まで行う未来も想像に容易いです。

税理士は増加しているが、中小企業は減少している

税理士登録者数は年々増加している一方、顧客である中小企業は減っているため、競争が激化しているという一面もあります。

このデータは現場税理士からすると意外でしたが、税理士の登録者数は下記のように毎年増加しています。

会計年度税理士登録者数
平成22年(2010)年度72,039人
平成27年(2015)年度75,643人
令和2年(2020)年度79,404人
令和3年(2021)年度80,163人
令和4年(2022)年度80,692人
令和5年(2023)年度81,280人
参照元:税理士制度|国税庁

2022年度税制改正により、税理士試験の受験要件が緩和されたので、今後も税理士登録者は増え続けるかもしれません。

反面、顧客である中小企業は高齢化に伴い減少の一途を辿っています。

中小企業数2014年2016年2021年
380.9万者357.8万者336.5万者
参照元:中小企業・小規模事業者の数(2021年6月時点)の集計結果を公表します|中小企業庁

税理士の顧客のメインは中小企業であるため、中小企業が減ることはクライアントが減ることを意味します。

税理士の将来性というとAIの脅威にばかり目が行きがちですが、需要と供給のバランス変化による競争激化も水面下で起きているようです。

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AIと税理士業務の関係について考える

AIに代替可能とされている税理士ですが、『日本の税理士』に焦点を置いてみると少し見え方が変わります。

実は、論文を発表したオックスフォード大学があるイギリスや、アメリカ他の国では、税務申告書の作成代行業務に資格を必要としていません。誰でも代行が可能です。

しかし、日本では税務代理・税務書類の作成・税務相談』が税理士の独占業務とされており、税務に関する専門家としての立場を確立しています。

日本の税理士は、AIにはできない「税務の専門家としての保証」ができることを意味しているのです。

さらに税理士の専門分野である『税務』では、「税法」という法律の面だけでなく、「会計」や「経営助言」など、中小企業に関する複数の専門性を発揮することができます。

下記では、それぞれの仕事についてAI代替性を確認してみたいと思います。
巷での噂と違って、まだまだ税理士の仕事はなくならないことがわかりますよ。

税法の専門家

税理士法第1条では下記の規定があります。

「税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそって、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。」

参考元:税理士の使命|国税庁

第1条において税理士の使命として、クライアントと税務官庁のどちらにも偏らず、「正しい法解釈」を行うことを求められているのです。

「正しい法解釈」を行うためには、何が必要になるでしょうか?

もちろん様々必要なものはありますが、最も重要となるのは判断の要因となる「背景の理解」だと考えています。

現状AIが判断できるのは『一般的事例』であり、各事例にあった法解釈をすることまでは不可能です。

事実、法律家である弁護士業務のAI代替可能性は1.4%と、その率はかなり低いとされています。

日本の税理士は「税法の専門家」として、各事例の背景を理解したうえで正しい法解釈を行う高度な仕事をしているのです。弁護士がなくならずに税理士がなくなるといったことは考えづらいでしょう。

会計の専門家

クラウド会計の進化により、会計は自動化され、素人が税務申告書の作成まで行えるような未来がすぐそこまで来ています。

しかし、クラウド会計で作られた書面は会計・税務の正確性が保証されていません。

確かにクラウド会計は便利ですが、正しい決算書、税務申告書の作成は、ケースバイケースが多い税理士業務において、AIが実務を判断して代行することは難しいと考えます。

決算書や税務申告書の数字の背景には、様々な実務判断が伴うものです。

言葉を選ばすにいうなら、クラウド会計だけでは「決算書らしきもの」が出来上がるだけです。

税務調査を受けた際に「AIが自動で仕訳したものなので会計処理責任はAIにあります」といった主張が認められるわけがありません。

税理士は「税法の専門家」であると同時に「会計の専門家」として、正しい決算書を作成・保証することができるのです。

経営助言の専門家

税理士は、経営者の「親身な相談相手」でもあります。

経営者と距離が近く、相手の懐事情を相手以上に正確に把握しているのが税理士です。

経営者にとっては無駄に構える必要のない、相談しやすい専門家なのです。経営、税金はもちろんのこと、身内話の相談をうけることもしばしば…。

そんな税理士は「財務管理」「経営助言」の分野でも活躍することが可能です。

経営コンサルタントのAI代替可能性は0.3%中小企業診断士は0.2%とされており、経営者の親身な相談相手として税理士が行う「経営助言の業務」は、AIに置き換わることのない人間にしかできない分野といえるでしょう。

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『税理士はなくならない』AI時代の税理士の将来性について

上記のように、税理士は『複数分野の総合的プロフェッショナル(税法・会計・経営助言)』である限り、AIに代替される可能性は低いと考えられます。

記帳代行や単純な税務申告といった『代行作業』がAIに置き換わる可能性は十分にありますが、税理士業務の本質はそこではありません。

むしろAIと税理士業務は相性がいいといえます。

記帳を含むデータ処理の単純作業はAIに任せて、税務判断や経営助言といった付加価値サービスに時間を割くことができれば、より単価の良い仕事ができるでしょう。

AI時代を生きる税理士が今後活躍するためには以下のような方法があると考えます。

AIとクラウド会計の活用で付加価値サービスを提供

税理士の中心的業務である『中小企業の顧問』を行う場合、今後はAIとクラウド会計の活用が必要不可欠でしょう。

クラウド会計を上手に活用することで以下のようなメリットがあります。

クラウド会計を活用できたら…

・働く場所を選ばない

・記帳を自動化することで時間の余裕が生まれる

・資料をデータ管理できる

時間や作業場所の余裕が生まれることで、税理士はもっと自由に経営助言等の付加価値サービスを提供することができます。

税理士の将来性を考えた際には、今からクラウド会計の活用できるように準備を開始するべきだと考えています。

人間相手だからこそ聴く力・提案力が輝く

国税庁のサイトでは、チャットボットが開設されて質問に答えるようになりました。

しかし、その解答は機械的で的を得た回答とは言えないレベルです。

AIには、積み重ねた信頼関係も、質問者の繊細な心の機微にも対応することができません。

日ごろから経営者の話を聴き、会社の財務状況を全て把握している顧問税理士だからこそ、できる提案があると思います。

我々の仕事相手は人間です。信頼を勝ち取った先に仕事が繋がってくるのだと思います。

専門分野で特化する

税理士業務というと「中小企業の税務顧問」がイメージされやすいですが、専門分野で活躍する税理士もいます。

資産税国際税務M&A支援等は、専門性が高く特化した知識と経験値が求められます。

このような専門分野はAIでは太刀打ちできないため、特化する分野を定めることも一つの手段であると考えています。

【結論】税理士はなくなるの?→税理士はなくならない!

今回はAI時代を生きる税理士の需要について考えてみました。

私は「税理士が完全にAIに代替される」未来はないと考えており、むしろ税理士はAIやクラウド会計と共存することで仕事の幅が増えると想像しています。

ただ、AIの進化に対応するための準備は今から必須であり、AI時代を生きるこれからの税理士としてどのような道を選ぶか早めに検討するべきでしょう。

AI時代に取り残されないために

この記事を最後まで読んでくださった皆さんは、向上心が高く将来に備えて行動できる優秀な方々と思われます。

しかし、もし今の職場が、AI時代の進化に対応できる事務所でない場合は、将来に向けて転職も考えるべきです。

記帳代行がメインの職場の場合、厳しいことを言いますが、そろそろ焦るべきだと思います。

「クラウド会計のノウハウ取得」「経営コンサルティングの経験値」「専門分野の特化」それぞれの目標に向けた最短ルートの職場選びをしましょう。

居心地が良いからと成長できない事務所に留まっていては、低価格競争に飲み込まれ仕事を失う可能性もあります。

どのフィールドで勝負するか戦略的に考える努力も必要です。
汗をかいて頑張ることだけが努力ではありません。
その前のフィールド選択の方がずっと大切なのです。

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